火口湖からの連続的火山ガス放出
ニオス湖とマヌーン湖(アフリカ・カメルーン)


 カメルーンの北西部にあるニオス湖とマヌーン湖は、それぞれ1986年及び1984年に2000人近くもの死者を出したガス突出災害で有名な火口湖です(詳細はこちら)。 このガス突出の原因は湖底に蓄積した、CO2を主成分とする火山性ガスによる、いわゆる"湖水爆発"のためと考えられています。 そこでこれらの湖の水を深さごとに採取し、溶け込んでいる 希ガスの同位体組成を分析しました。その結果、湖底に近いほど火山性のヘリウム・アルゴン同位体比を示し、 両湖底に火山性のガスの供給が継続されていることが分かりました。

 また、次の災害を防ぐため、湖底に蓄積する火山性ガスを安全かつ定常的に脱ガスさせるプロジェクトが、カメルーン・アメリカ・フランス・日本の共同チーム (日本の代表者は岡山大学・地球物質科学研究センターの日下部実教授)により行われています。このプロジェクトにより2001年2月から現在まで、これらの湖の深部から"穏やかな"脱ガスが進行しています。 本研究室からも長尾教授が調査とガス抜き作業に協力しています。湖水のHe同位体比深度プロファイルから、脱ガス作業に伴い火山性ガスの蓄積量が減少していることが明らかになっています。


ニオス湖の湖底からのガス抜きの様子。深度約200mの湖底に近い水をパイプで汲み上げると、コーラの栓を抜いたときのように炭酸ガスが発泡・上昇し、水面から40mもの高さの噴水を吹き上げます。 2001年12月長尾教授撮影。


カメルーン・ニオス湖とマヌーン湖における3He/4He比の深度プロファイル。脱ガス作業前(1999-2001年)のニオス湖では、100m付近までマントル起源Heの寄与が 大きかったことが分かります。2003年には湖底からのマントル起源Heの供給が脱ガス作業により抑えられているので、表層から溶け込んだ大気Heの寄与が150mより浅い所で大きくなっています。 マヌーン湖のデータは脱ガス作業前の1990年及び2001年のもの。


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