キンバーライトマグマの起源


 約 150km より深い地球内部 (マントル) の高温・高圧下で生成したダイヤモンドは、キンバーライトマグマと呼ばれるマグマの噴火によって地表にもたらされます。兼岡一郎先生 (東大地震研究所名誉教授) をリーダーとするキンバーライト・プロジェクトの一環として、希ガス同位体からその起源を調べようとしています。
 これまでにロシア・Udachnaya 産のキンバーライトについて、ハワイなどのホットスポット地域の火山岩によく似た、プルーム起源であることを示すネオン同位体組成を見出しました。
 この試料や他のキンバーライト試料と、それらに含まれるダイヤモンドについての、より詳細な希ガス同位体分析から、現在我々が手にすることのできる天然試料のうちで最も深い地球内部から上昇してきた、キンバーライトマグマとダイヤモンドの起源を明らかにしたいと考えています。

Sumino et al. (2006) Geophysical Research Letters, 33, L16318, doi:10.1029/2006GL027144.

地図
試料が採取された Udachnaya キンバーライトパイプの位置。
自分で採りに行ったわけではなく、兼岡先生を通して共同研究者の A.V. Sobolev 博士からいただきました。

薄片写真


キンバーライト薄片の偏光顕微鏡写真。
鮮やかな色のついた、多数の丸い粒がカンラン石です。このカンラン石を鉱物分離し、内部の流体包有物(気泡あるいは液泡)に含まれている希ガスを抽出・分析しました。

Ne同位体比


得られたNe同位体比。
マントル中の Ne は、始原的 (Primordial) な Ne と、核反応起源 (Nucleogenic) の 21Ne が混合した結果です。中央海嶺玄武岩 (MORB) の起源である比較的浅い上部マントル (Upper mantle) と、ハワイなどのホットスポット (Hotspot) の起源である深部マントルからの上昇流 (プルーム, Plume) では、これら二つの混合比が異なるため、図のように異なる Ne 同位体比を持ちます。Udachnaya キンバーライト (Kimberlite) の Ne 同位体比は、分析時に不可避な大気成分 (Air) の寄与を補正すると、プルームと上部マントルの中間に来ます。このことは、キンバーライトの起源に深部マントルから上昇してきたプルームが関与していたことを示しています。