He用ダブルコレクターシステム


 Heは同位体比(3He/4He)が地球の各部分(大気・地殻・上部及び下部マントル)で大きく異なり、かつ大気中の存在度が小さいため、マントル成分の寄与に対して敏感なトレーサーとして用いられています。マントル物質の希ガスの情報は火山ガス、火山岩中の鉱物斑晶、そしてマントルに由来する捕獲岩から得られますが、鉱物中に含まれる希ガス、特にヘリウムは極微量(10-7〜10-10cm3STP/g)であるため、高感度・高精度の希ガス同位体測定技術が不可欠です。 このため、二つの検出器で同位体を同時に測定するダブルコレクター希ガス質量分析計(VG5400, Micromass)に、微量のイオンを高感度・高精度に測定できるイオンカウンティング法を導入することにより、極微量ヘリウムの高精度同位体測定を可能にしました。また他の希ガスの同位体比や元素比も合わせて議論するには、全希ガス同位体を同一試料について測定する必要があります。そこで全希ガスを高精度・高感度に分析するために、デイリー検出器やイオン源の改良も行いました。

Sumino et al.: J. Mass Spectrom. Soc. Jpn., 49, 61 (2001)

ダブルコレクター
He用ダブルコレクター質量分析計の概念図。
3Heが主フライトチューブを通過するとき、4Heの通る軌道にあわせて副フライトチューブと検出器が設置されています。
Heスペクトル
同時測定のスペクトル例。
He分析の妨害イオンとなるHD+及びH3+3He+がきちんと質量分離されています。
改良後比較
3He測定用検出器の比較。
新しく付けたイオンカウンティング(黒丸)を使うと、従来(デイリー検出器、白抜き四角)に比べて少ないヘリウムでも精密に同位体比を測定できます。

希ガス質量分析装置のページに戻る

このページに関する意見・質問は,角野浩史まで