身のまわりにあるさまざまな天然試料に含まれる"同位体"から、地球の過去と現在を知ろうとしています。

 太陽系は約46億年前に,よく均質化した元素・同位体組成をもつ星雲ガスから形成したと考えられています。それから長い時を経て、さまざまな物理・化学過程を経て元素の再配分が起こった結果が、現在の太陽系、地球、ひいては私たちです。

 太陽系初期の情報をほぼそのまま保存している小惑星や、月、火星、彗星などの地球外天体のかけらである隕石や宇宙塵、地球深部のマントルに起源をもつ火山岩、マントル捕獲岩、ダイヤモンドなどの、天然の試料を構成する元素の同位体の個数の比(同位体比)から、直接見ることがひじょうに困難な、地球外や地球内部における過去や現在の出来事を紐解いていくのが、同位体宇宙地球化学の醍醐味です。

 しかし、物質中の元素の同位体比はあまりに多くの要因で変動し、また天然試料は人間の一生より遥かに長い時間スケールの履歴をもっているために、限られた情報からそれを解き明かすのは簡単ではありません。そこで私たちは、希ガス*同位体をツールとして研究を進めています(希ガスについての詳細は、左メニューの「希ガスとは」をご覧ください)。

 さらに地球は水惑星と呼ばれるように、海洋や氷河、湖、河川、地下水という形で表層にふんだんに水が存在し、また私たちが呼吸できる大気に覆われています。このような人の生存に適した条件が整っているのは何故なのか、それを明らかにするのが、揮発性の高い元素や化合物を研究対象とした、揮発性物質地球化学です。

 角野研究室では、天然試料中の希ガス同位体に加え、ハロゲンや炭素などの揮発性物質について質量分析を駆使して得られる物質科学的情報を手がかりに、地球内部の化学的不均質の起源と履歴、大気・海洋の進化過程などを解明することを目指しています。

卒研・大学院で当研究室で研究してみたい方は進学案内をご覧になり、角野 までご連絡ください。

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*希ガスの「希」はまれ(稀、rare)であることを意味しますが、アルゴンは例外的に窒素、酸素(、水)に次いで大気中に多い元素ですので、化学的挙動が他の元素と異なることを意味する「貴」の方が適切かもしれません(実際に英語では、貴ガスに相当する noble gas の方が多く使われています)。しかしアルゴンの中でも 40Ar がむしろ例外で、他の元素は大気中ではやはり微量ですし、固体物質(岩石、鉱物)中ではさらに微量しか含まれないので、私たちは従来通り「希ガス」と表記しています(詳細は「希ガスとは」のページで)。